2017年11月20日月曜日

国内における有機食品の現状について


有機食品の国内需要

 米国や欧州を始めとする海外では、有機食品の愛好家が多く、一般的な食料品店の売り場には、ほぼ全ての品目に有機食品が陳列されており、いつでも有機食品を手軽に購入する事が出来ます。その一方で、日本国内では欧米諸国に比べますと、まだまだ有機食品の需要は少なく、生産量も少ない状態ですが、近年では健康志向の高い女性を中心に、有機農産物や有機加工食品を好んで購入される方も増加しており、専門店だけでなく、一般の食料品店やネット通販等でも、有機食品が販売されるケースが見られる様になって参りました。
 しかも、2020年に開催される東京オリパラ競技大会の期間中に選手団やサポートチームに提供される食事の調達基準の一つとして、GAP認証を受けた農産物のうち、国内の有機農業によって生産された有機農産物が推奨されるという事は決定しており、今後、日本国内においても、その需要は高まるのではないかと考えられています。

 

有機食品に係わる認定制度

 農林水産省では、有機食品に係わる認定制度として、有機JAS(日本農林規格)という規格を定めており、現在、この有機JAS規格は、生産方法に関する規格に該当しており、『有機農産物』、『有機加工食品』、『有機飼料』及び『有機畜産物』の4品目4規格が定められています。



有機食品に使用する事が出来る食品添加物(殺菌剤)

 通常、加工食品を製造する上では、食品衛生法で規定する「食品・添加物の規格基準」に基づき、各種食品類の原材料を殺菌する事や洗浄する事は認められていますが、有機JAS規格(日本農林規格)では、上記の内容とは別に、有機食品を製造する上で、その使用が認められている食品添加物と使用基準、そしてその重量の割合が5%以下というルールも定められています。(表3)












 この事から、有機JAS認証を受けた有機農産物や有機農産物加工食品の原料野菜の殺菌や洗浄に、食品添加物である次亜塩素酸Na溶液や、高度さらし粉、亜塩素酸水(きのこ類を除く)、亜塩素酸Na溶液(生食用野菜類に限る)、過酢酸製剤は使用出来ず、有機酸溶液等の使用も認められていないのが実状のようです。又、次亜塩素酸水も、次亜塩素酸Naに各種酸を加えた次亜塩素酸Na調整液は使用出来ないと明記されています。


まとめ
 昨今、日本国内においても各種有機食品の需要は少しずつではありますが、高まりつつあり、その内の有機農産物に関しましては、2020年に開催される東京オリパラ競技大会で提供される農産物の調達基準の推奨項目の一つとして明記されています。従いまして、今後はこれら有機農産物を始めとする有機食品の需要がますます増加していくであろうと予測されています。
 しかしながら、この有機食品を製造し、市場に流通させる為には、農林水産省が定めている有機JAS規格(日本農林規格)の認証を取得する必要があり、この有機JAS規格には、様々な制約があります。その中で食品添加物に関しましては、食品衛生法上で認められている物質の中から使用出来る食品添加物と、その使用制限が細かく規定されており、塩素系殺菌剤に関しましては、一般的な食品原材料の殺菌処理剤として、多くの方々が利用されている次亜塩素酸Naすら、この有機農産物の殺菌には、使用する事は出来ず、動物の腸の消毒若しくは卵の洗浄用に限り、その使用が認められています。その為、有機食品を加工されている食品メーカー様では、有機農産物専用の生産ラインを設置したり、唯一使用が認められているオゾン若しくは食塩水を電気分解した次亜塩素酸水の生成装置を導入する等、様々な設備を投資され、製造されておられます。しかし、これら有機農産物の原料殺菌に使用可能なオゾンや次亜塩素酸水に関しましては、有機物(汚れや野菜のエキス)が多く存在している環境下では、十分な殺菌効果が得られない場合が多く、取引先様や自社で定められている微生物規格を遵守する事も出来ない場合が多々あるというのが実態の様です。しかも、有機農産物は慣行野菜とは違い、牛糞や鶏糞等を利用した有機発酵肥料で栽培される為、この堆肥由来の病原微生物に汚染されている可能性が高く、もし仮に殺菌不足により、有機農産物にこの病原微生物が付着したまま製造された有機加工食品が市場に流通してしまいますと、大きな食中毒事故に繋がる危険性があります。従いまして、有機農産物並びに、この有機農産物を原料に用いた有機加工食品の製造を行う上で、原料野菜の殺菌処理や洗浄処理は重要なポイントであり、又、汚れていたり、汚れが取れにくい現場という環境下でも殺菌効果を享受して頂くこと、尚且つ次亜塩素酸水と同じ食塩を電気分解する事で得られる亜塩素酸水の使用は、むしろ啓蒙されるべきであり、何よりも有機農産物は慣行野菜よりも衛生的でなければならないと考えます。そして、その為には、安全・安心な有機農産物を用いて有機食品を加工する事が出来る法整備が今こそ、必要なのではないでしょうか?

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